【AI翻訳の落とし穴と対策シリーズ 2】AI翻訳の誤訳を防ぐ:プレエディットの重要性と事例解説
- makiyamamura
- 2025年12月26日
- 読了時間: 4分

AI翻訳は、技術文書やマニュアル作成の効率化に大きく貢献しています。しかし、原文の構造や表現が翻訳に適していない場合、AI翻訳はその弱点を露呈し、誤訳や不完全な表現を生み出すことがあります。
多くのメーカーで日常的に運用されている技術文書には、「曖昧さ」や「言葉足らず」が含まれていることが珍しくありません。これは、そもそも「翻訳されることを前提としていない日本語」が多く存在するためです。
そこで重要になるのが、翻訳前に原文を整備するプレエディットです。原文をより明確で一義的な文章に調整しておくことで、AI翻訳の誤訳リスクを大幅に抑えることができます。
※本記事は、AI翻訳の落とし穴を解説するシリーズの第2弾です。
第1弾では、技術文書を翻訳前に整える重要性について取り上げました。
本稿ではその続編として、AI翻訳が誤訳を生みやすい原因となる“原文の曖昧さ”に焦点を当て、プレエディットがどのようにリスクを減らすのかを、実際の技術文書をもとにした事例とともに具体的にご紹介します。
1. 警告文に潜むAI翻訳の誤訳リスク(使用説明書)
原文
「移動時には、段差のある場所により機器の転倒やけがの可能性があります。」
完成翻訳
Transporting XXX on the ground with level difference may cause the equipment to overturn, resulting in injuries of the operator(s).
AI翻訳(Google)
When moving the equipment, there is a risk of it falling over and causing injury if there are uneven surfaces.
👉 問題点
危険の原因が曖昧
文法的にも不自然
伝えたいリスクが十分に表現されていない
プレエディット後
プレエディット原文
「段差のある場所で本機器を移動させると、機器の転倒により作業者がけがをする可能性があります。」
AI翻訳(WORD)
If the equipment is moved on uneven ground, it may tip over and cause injury to the operator.
→ 文法的な問題が解消され、事故リスクがより具体的に伝わる文章になりました。

2. 回転部に対する警告指示文におけるAI翻訳の曖昧さ(取扱説明書)
原文
「各軸の起動時に、回転部付近に指を近づけないでください。」
完成翻訳
When each axis starts rotation, keep your fingers away from the rotating axis unit.
AI翻訳(Google)
When starting each axis, do not place your fingers near the rotating parts.
👉 問題点
「起動」が「回転動作の開始」であることが伝わらない
“starting axis” など曖昧な表現が生じる
プレエディット後
プレエディット原文
「回転ユニットの各軸が回転動作を開始したら、回転ユニット付近に指を近づけないでください。」
AI翻訳(Google)
Once each axis of the rotation unit starts rotating, do not place your fingers near the rotation unit.
→ 危険の対象が明確になり、作業者への指示として適切な表現に改善されました。

3. PCアプリ指定に関する注意文の誤訳と改善(カタログ)
原文
「PCソフトは、必ず指定されたアプリケーションを使用してください。」
完成翻訳
Be sure to use only the specified PC application software.
AI翻訳(Google)
For PC software, be sure to use the specified application.
👉 問題点
「PCソフトは」は単なる主題提示
“specified application” が何を指すか曖昧
プレエディット後
プレエディット原文
「必ず、指定されたPCアプリケーションソフトウェアのみをご使用ください。」
AI翻訳(Google)
Be sure to use only the specified PC application software.
→ 一義的な文章となり、誤解の余地がなくなりました。
4. バッテリー交換時期の記述に潜む誤訳リスク(納入仕様書)
原文
「本機器は、出荷前にバッテリーが取り付けられており、納入後4年以内に交換要となることがあります。」
完成翻訳
The equipment are attached with batteries before factory shipment, and these batteries may require replacement within 4 years from delivery.
AI翻訳(Google)
This device is shipped with a battery installed, which may need to be replaced within four years of delivery.
👉 問題点
「交換対象」が機器なのかバッテリーなのか曖昧
AIは文脈補完が苦手なため誤解が生じやすい
プレエディット後
プレエディット原文
「本機器のバッテリーは出荷前に取り付けられており、納入後4年以内に交換要となることがあります。」
AI翻訳(Google)
The battery in this device is installed before shipping and may need to be replaced within four years of delivery.
→ 交換対象がバッテリーであることが明確になりました。

AI翻訳は“原文の質”に大きく左右される
一見問題のなさそうな日本語でも、翻訳の観点から見ると曖昧さが潜んでいることは少なくありません。翻訳者は日々、こうした「訳しにくさ」を見抜き、真意を確認しながら翻訳を行っています。
しかし、原文の調整を行わずにAI翻訳を適用すると、生成された文章に含まれる誤訳は、単なるミスにとどまらず、企業の信頼性や安全性に影響を及ぼすリスクとなり得ます。
AI翻訳を活用する際こそ、原文となる日本語に目を向け、必要な整備を行うことが重要です。
京あはせでは、こうした観点に基づく原文のプレエディットや、日本語としての読みやすさを高める原文リライトも承っています。
翻訳作業とあわせて、ぜひご検討ください。




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